2020年1月23日

【対談】「大磯市」原大祐さん×「茅ヶ崎ストーリーマルシェ」青木隆一さん|地域におけるマルシェの役割(前編)

written by storyMarche
in category レポート

2013年7月から始まった「茅ヶ崎ストーリーマルシェ」も7年目を迎えています。想いの詰まったストーリーのあるお店だけを集めたこのマルシェには、地元茅ヶ崎を始め、広く湘南・西湘全域から出店者さんが集まってくださいます。中には、大磯で10年続く有名なマルシェ「大磯市」に出ている出店者さんも。

今後も茅ヶ崎ストーリーマルシェを続けていきたいと考えた時に、地域におけるマルシェの存在意義や、大切にしていきたいこととは何でしょうか? 

茅ヶ崎ストーリーマルシェの運営元である松尾建設株式会社の青木さんと、大磯市を運営している原大祐さんが対談しました。その内容を、前後編に渡ってお届けします!

 

原大祐(はらだいすけ)さん

NPO法人「西湘をあそぶ会」代表。平塚市で小学校高学年〜中学生まで育ち、高校時代を大磯町で過ごして魅了される。東京の大学へ進学し、広告業界やまちづくり系の会社で社会人経験を積んだ後、2008年に大磯町に移住。開催回数110回を超える「大磯市」や、「大磯農園」などの地域活動に携わっている。神奈川県住宅供給公社の団地共生プロデューサーも務める。

 

青木隆一(あおきりゅういち)さん

松尾建設株式会社 代表取締役。地元茅ヶ崎で70年以上続く建設会社の3代目。湘南を中心に家族が幸せになる家づくりを提案している。2013年7月より「茅ヶ崎ストーリーマルシェ」を立ち上げ、開催回数は39回を超える。こだわりの品を集結させ、笑顔と会話が楽しめる、地域の方々に愛される朝市となるよう運営を行っている。

大磯市をなぜやっているのか

大磯市の風景  Via:https://www.oisoichi.info/

青木さん:原さんは、どうして大磯市を始めたんですか?

原さん:大磯市を始めたのは、この大磯の風景や暮らしをずっと守りたい、という動機からなんです。昔は別荘地だった大磯には、雰囲気の良い路地や古い屋敷、昔ながらの素朴な個人商店などが残っていて、東京とは違う暮らしがある。僕が好きなこの大磯の暮らしをずっと続けたいから、大磯市はその手段としてのマルシェなんです。

町の担い手を育てるマルシェ

原さん:大磯市は、漁港・県の所有地で開催する全国でも珍しい市場です。漁港の市場では、シケの時には漁ができないから魚が買えない日もあります。そういう時に、「魚だけじゃなく野菜も売っていたらいいのに」という思いが漁協の組合長にあることを知りました。

また、町の担い手を育てたいという背景もあります。少子高齢化している大磯は、いわゆる東京近郊のベッドタウンに代表される「郊外都市」でもなく、「地方都市」でもなく、「地方」の小さな町や村と同じ状況なんです。

僕は大磯で田んぼを9年ほどやっていますが、農業に従事している生産者も大磯にはまだいます。でも跡を継ごうという人は2割以下で、鳥獣被害も激しく商売になりにくいのもあって耕作放棄地が増えている。商業に関しても、個人商店はあるんだけど、息子の代に継がせるまでには至らない。

ただ、僕は地元の生活圏内にあるお店がなくなると非常に困る。放っておくとお店が自然に減っていってしまう地方の小さな地域を回していくには、お店をつくっていく必要があるんです。だから大磯市は「イベントで大磯の町を盛り上げたい! この町に人を呼びたい!」と思ってやっているのではなく、地域課題の解決のためのマルシェなんですね。

町の未来へつなげるため、大切にしたいことを出店基準に

青木さん:なるほど、そこは僕らの住んでいる茅ヶ崎とは、町の事情が少し違いますね。うちのマルシェは、自分の会社の駐車場を使って20店舗程の小さな規模でやっています。大磯市は、今ではすごく大規模になりましたが、始めた当初はどうだったんですか?

原さん:今は約200店ほどが出店していて、キッチンカーだけで20台くらいあるんですが、最初は19店舗、それもほとんど身内のお店から始まりました。

青木さん:規模が大きくなっていくと、ジャンルも考え方もさまざまなお店から出店希望をいただくと思うのですが、大磯市では何か出店基準のようなものはあるんですか?

原さん:出店基準は3つ設けています。1つ目はローカルであること。出店者の優先順位は、①町内の人、②茅ヶ崎~小田原エリア、③葉山逗子~真鶴エリアおよびその他、という順番で決めるようにしています。

基準の2つ目は、インディペンデント、独立した個人であること。企業や大手チェーン店ではないということですね。

原さん:基準の3つ目はハンドメイド、手づくりであることを重要視しています。その理由は、町につくり手をたくさん増やしたいからです。

日本の経済は今まで、消費者をつくり、消費地をつくることで発展してきました。人はつくり手でなくなった時、消費者でいることしかできなくなってしまう。町も同じです。地域に手を動かして何かをつくり出せる人がたくさんいて、それが地域内でうまく回っていけば生き残る町になり得るし、町の多様性や活気にもつながります。大磯市はそのための「インキュベーション(起業支援)」でもあるんです。

だから大磯市は、一過性のブームで盛り上がって、儲かって良かったね、みたいなイベントにしちゃいけない。大磯市で生まれた収益を、どう地域に還元・再投資していくかが大事だと思っています。

青木さん:大磯の町で何かをつくる人、お店を始めたいと挑戦する人を応援するために、3つの基準を設けているんですね。茅ヶ崎ストーリーマルシェも、例えば料理がすごく上手なのに、いきなり自分でお店を開くのはリスクが大きすぎて…と尻込みしている人が、初めの1歩を踏み出すための場所にしたいと思ってやっているので、すごく共感できます。まずはマルシェで知ってもらい、ファンをつくってもらって、いつかはお店を持てるようになってくれるといいなと。

>>後編に続く