2020年1月25日

【対談】「大磯市」原大祐さん×「茅ヶ崎ストーリーマルシェ」青木隆一さん|地域におけるマルシェの役割とは?(後編)

written by storyMarche
in category レポート

茅ヶ崎の地で7年目を迎える「茅ヶ崎ストーリーマルシェ 」を運営している青木さんと、大磯で10年続く「大磯市」を運営する原大祐さんが、地域におけるマルシェの役割について対談。その内容を前後編に渡ってお届けしています。

前半のお話では、規模や町の背景は違えど、地域で何かをつくり出したい人・チャレンジしてみたい人を応援するマルシェであることが共通していました。さて、後半はどんなお話が展開するのでしょうか?

 

原大祐(はらだいすけ)さん

NPO法人「西湘をあそぶ会」代表。平塚市で小学校高学年〜中学生まで育ち、高校時代を大磯町で過ごして魅了される。東京の大学へ進学し、広告業界やまちづくり系の会社で社会人経験を積んだ後、2008年に大磯町に移住。開催回数110回を超える「大磯市」や、「大磯農園」などの地域活動に携わっている。神奈川県住宅供給公社の団地共生プロデューサーも務める。

 

青木隆一(あおきりゅういち)さん

松尾建設株式会社 代表取締役。地元茅ヶ崎で70年以上続く建設会社の3代目。湘南を中心に家族が幸せになる家づくりを提案している。2013年7月より「茅ヶ崎ストーリーマルシェ」を立ち上げ、開催回数は39回を超える。こだわりの品を集結させ、笑顔と会話が楽しめる、地域の方々に愛される朝市となるよう運営を行っている。

マルシェを続けて、町に起こった変化

茅ヶ崎ストーリーマルシェ の風景 Via:http://www.matsuo-story.com/

青木さん:僕は茅ヶ崎で注文住宅をメインとした建設会社をやっているんですが、家づくりで大事にしているのが「家は建ててからが物語の始まり。施主さんと家と、長いお付き合いをしていく」ということなんです。その一環で、家のオーナーさんたちに集まっていただいて、会社の駐車場でBBQ会をしていたんですね。

そうすると、前を通る地元の人から「何してるの?」なんて聞かれる。そこで「もっと地域の人にも一緒に楽しんでもらえるような場所にしていきたいな」と思うようになったんです。その地域に住むご近所さんも含めて住環境だとすると、それは家を建てることの一部ですから。

そんなことから、茅ヶ崎ストーリーマルシェへ発展しました。今は20店舗ほどの出店者さんと2ヶ月に1度、奇数月の第2土曜日に開催しています。だんだんと茅ヶ崎の人には認知されるようになり、開催日には朝いちばんに買い物に来てくれる常連さんもできてきました。

原さんは大磯市を10年続けてきて、町に何か変化は見られますか?

実際に町にお店ができた

原さん:7年目の時に一つのマイルストーンだなと感じたのは、大磯市から始まったお店が実店舗になったことです。大磯町の商工会の会長さんが空き家を提供してくれて、そこに大磯市でいちばん人気のあるパン屋さんがテナントで入りました。そしてそのパン屋さんは今度、独立して新たな店舗を持つまでに成長したんです。

この茶屋カフェでは、定期的に「大磯立ち飲み会議」という集まりも開かれています。大磯で何かやりたい人が発表し、それをみんなで後押しするような場です。みんな既に何かしら生業を持っているんだけど、それに加えて地域の仕事をやっている感じ。大磯にいると忙しい、なんて言う人もいます(笑)

月に一度のマルシェが町のコミュニケーションを生み出す

原さん:月に1回、町の人が大磯市で会うことで、自然なコミュニケーションが生まれているんですよね。電話して言うほどの用事でもないけれど、顔を見たら「そう言えば」という話が実は重要だったりします。

例えば、「今度うちの家が空くんだけど使いたい人いない?」とか、「こないだの大磯市だけどさ」みたいな共通の話題・共通のプラットフォームがあることで会話が生まれる。大磯市に行けば、誰かしら知り合いに会える。スーパー銭湯で毎日顔を合わせても、そこにはコミュニティは生まれにくいんですよね。

「コミュニティとは、ゆるやかなクラスメイトみたいなもの」だと思います。クラスメイトには、あの先生が、とか共通の前提があったことで成り立っていたゆるいつながりがあるんです。「あいつ嫌い」と思っていても、なんだかんだ顔を合わせているうちに、いつの間にか仲良くなったりする。大磯市があることで、そういう町内の関係性や空気ができてきたような気がします。

クォリティ・オブ・ローカルライフ

原さん:マイホームを買って、家電を買って、車を買ってという、物を買うことが豊かさだった時代があって、それが行き渡ると今度は、それらの物をパーソナル化していくことで日本の経済は今まで回ってきたんですが、果たしてそれは豊かさの実感があるのか?ということに皆がもう気づいているんですよね。消費者でいるだけでは、収奪されるばかりで幸せになれないことに。

町は郊外化することで個性がなくなっていきます。郊外化というのは、日本の至る所でよく見る、大きなショッピングセンターがあって、バイパスがあって、その両脇にチェーン店が並んでいて…という、どこの町だか分からない景色。人が入り込みすぎると郊外化するんです。

地方は本当はいろんなものが保存されていて、ローカライズ、個性化されているはず。僕は大磯の、田舎ならではの豊かさ「クォリティ・オブ・ローカルライフ」が気に入っているし、守りたい。そのためには、地域につくり手・生産者を増やし、内貨をグルグル回すことだと思っています。

マルシェが地域をつなぎ直し、次の世代へ保存する

青木さん:茅ヶ崎も昔の別荘地で、ゆったりした暮らしが好きで住んでいる人が多いし、移住してくる人もそれが好きだから住み移ってきます。だからこそ、その良さが続いてほしいですよね。

大磯とは起きている問題が少し違うかもしれませんが、茅ヶ崎では建売住宅が町並みを変えてしまう所が怖い。大きなお屋敷がなくなると、その土地を細かく割って、画一的な建売があっという間に建ったりするんです。茅ヶ崎のゆったりとした町並みは残ってもらいたいから、僕らはそれができる家づくりをしていこうと思ってます。

原さん:茅ヶ崎はコミュニティ感が強いですよね。大磯に比べたらたくさんの人がいる市街地だと思いますが、ローカルの横のつながりが強い。地域性がちゃんと残っているんですよね。

青木さん:茅ヶ崎ストーリーマルシェも、大きくすることより、今の規模でできることがもっとあるはずだと思っています。

茅ヶ崎ストーリーマルシェでは最近、地域のおじいちゃんやおばあちゃんの待ち合わせ場所になっていたり、若者たちが幼馴染と再会していたり、そんな光景が生まれていて、いいなぁと思っているんです。僕の息子も会社に入って一緒に活動し始めました。

原さん:マルシェの目的は大きさじゃないですよ。マルシェがあることで、地域がつなぎ直されるというのが良いですよね。やはり多世代でごちゃごちゃしている地域は元気があります。

<まとめ>

マルシェがあることで、地域につくり手・生産者が増え、地域の経済が循環し、コミュニティの人間関係や対話も活性化する。自分たちが好きで住んでいる町を、自分たちで楽しく豊かなものにし、世代を超えて守っていく風土ができる。マルシェにはそんな役割がありそうです。茅ヶ崎ストーリーマルシェ でも、既にそんな良い循環が生まれつつありますね! この景色をこれからも大事に続けていけたら良いなと思えた、今回の対談でした。

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